2010年6月16日

スピード時代

サッカーのワールドカップが始まった。私自身は特にサッカーのファンというわけではないが、ワールドカップは国民的お祭り。初戦のカメルーン戦は、当然生中継観戦することになった。
サッカーファンでない私でも、1-0の勝利は本当によかったと思う。社会がなんとなく暗く、景気・経済もなかなか上向かない今、「日本勝利」は社会を明るくする素材にすらなる。あの北朝鮮でも、北朝鮮が負けた試合でも中継しているそうだ。頑張っている姿は国民の意識を元気にするからではないかと「コリア・レポート」の辺真一氏がテレビで語っていた。
電車の中は携帯やゲームばかりで、雑誌を読む人などなかなか目にすることができない今なのに、ワールドカップ初戦が近づくとともに、その特集の雑誌「graphic Number」を電車の中で読む人を、私は何人も目にした。世の中がサッカーに夢中になっている空気がある。
その初戦で勝利を決めた10時間後に、その様子が掲載された「サッカーマガジン」が配本された。発売日は配本日の翌日。試合が終わったのは午前1時である。私がその「サッカーマガジン」を見せてもらったのは午前11時だ。半日もたっていない。本田のゴールを決めたシーンはもちろん、その試合の数々の写真とその様子が、新聞ではなく、雑誌で掲載されている。 いったい、何時に出来上がっていたのだろう? 昨日全国に配本され、今日はその発売日。おそらく多くの人たちが、その「サッカーマガジン」を手にしているに違いない。
インターネットや電子メールがあたりまえのインフラになり、24時間動き続けるのがあたりまえになったとは言え、その記事を書いたライター、デザインをした人、そして印刷、製本・・・10時間で仕上げるシステムはすばらしい。もちろん、その裏では大変厳しい労働を強いられている人が多くいることは間違いないのだろうが・・・。とは言え、そのスピードに改めて驚いた。さらに、この国民的お祭りで、それに夢中になる空気があるのだから、確実にその情報を待つ人は増えていて、出版社はその商機をきっちりつかんでいく。それは、社会を明るくしたり、元気にしたりすることにも、必ずや貢献するに違いない。

2010年6月7日

日本ブランドと憧れ

日本の安心安全ブランドについては、いろいろな場所で報じられているが、日本の中で暮らしていると、そのブランド価値については、あまり実感できるものではない。私自身は「そんなものかしら・・・」程度に感じていたのだが、最近それをリアルに感じる話をいくつか聞いた。

海外では日本車への人気は高く、日本車の中古車は高額で取引される。そういう中で、日本車の中古車を定期的定量的に取引できるルートをどう確保するかが課題になる。ある知り合いは、ヨルダンの人からそういう相談を受けたということだが、需要の方が大きくてなかなかそれに応えることができず残念がっていた。
中国では、食品や医薬品・化粧品について、日本ブランドが高く位置づけられている。中国人の話によれば、中国人自身も「中国製品は少し怪しくて信用できない。」と考えており、できることなら日本製品を購入したいと考えていると言う。経済的に余裕があれば日本製品を購入するのはもはや当然で、お金がないからやむなく中国製品で我慢しているのだと言う。その分、中国人はカラダに免疫ができていて、悪いものが体内に入っても、日本人のようにひ弱ではなく、体が対応できるくらい強くなっているのだと笑っていた。
香港では、ファッションも、イケメンも、日本がお手本だという。日本は憧れの対象であり、まさにファッションはそのように位置づけられる。これは中国の都心部でも似たような傾向がある。雑誌も、一部中国の言葉に書き換えられた日本のファッション誌を愛読し、そのスタイルをお手本にしている。なぜそうなったのか?・・・それは今の香港の若者の、憧れのエンターテイメントは日本のコンテンツだったからと言う。子ども時代に好きだったのは「セーラームーン」。青春時代にジャニーズ系のアイドルに憧れ、
ジャニーズ系アイドルの国、日本に強く憧れてきた。二十歳を超えると、人によっては何度も日本に来ている。都市部だけでなく、全国の観光地を巡っている人も少なくない。ジャニーズが生まれた日本を知りたい、観光に行きたい、という気持ちからなのだと言う。そしてさらに日本語を勉強するようになるのだ。香港の女の子にとっては、SMAPはすごい人気だ。私が話を聞いた香港の女の子(25歳)はキムタクが大好きで、いつかキムタクと話ができるチャンスが来たときのためにと、日本語の勉強を始めたのだという。
それは昔々の日本で、ビートルズやハリウッド映画に夢中だった少年少女時代に欧米諸国に憧れ、欧米諸国の文化やブランドを好み、より深く知るために英語を頑張って勉強していた、30~40年前の日本の少年少女によく似ている。憧れる力が上昇志向へとつながってきたのだろう。
今、日本はどこに憧れているのだろう。何に憧れているのだろう。かつて憧れた欧米諸国を追い抜き、身近になってしまったため、目標や憧れなどを失ってしまったようだ。
憧れは、大きな力になる。憧れる気持ちがなくなった今、何に向かって進めばいいのかもわからなくなっているのかもしれない。