2010年6月7日

日本ブランドと憧れ

日本の安心安全ブランドについては、いろいろな場所で報じられているが、日本の中で暮らしていると、そのブランド価値については、あまり実感できるものではない。私自身は「そんなものかしら・・・」程度に感じていたのだが、最近それをリアルに感じる話をいくつか聞いた。

海外では日本車への人気は高く、日本車の中古車は高額で取引される。そういう中で、日本車の中古車を定期的定量的に取引できるルートをどう確保するかが課題になる。ある知り合いは、ヨルダンの人からそういう相談を受けたということだが、需要の方が大きくてなかなかそれに応えることができず残念がっていた。
中国では、食品や医薬品・化粧品について、日本ブランドが高く位置づけられている。中国人の話によれば、中国人自身も「中国製品は少し怪しくて信用できない。」と考えており、できることなら日本製品を購入したいと考えていると言う。経済的に余裕があれば日本製品を購入するのはもはや当然で、お金がないからやむなく中国製品で我慢しているのだと言う。その分、中国人はカラダに免疫ができていて、悪いものが体内に入っても、日本人のようにひ弱ではなく、体が対応できるくらい強くなっているのだと笑っていた。
香港では、ファッションも、イケメンも、日本がお手本だという。日本は憧れの対象であり、まさにファッションはそのように位置づけられる。これは中国の都心部でも似たような傾向がある。雑誌も、一部中国の言葉に書き換えられた日本のファッション誌を愛読し、そのスタイルをお手本にしている。なぜそうなったのか?・・・それは今の香港の若者の、憧れのエンターテイメントは日本のコンテンツだったからと言う。子ども時代に好きだったのは「セーラームーン」。青春時代にジャニーズ系のアイドルに憧れ、
ジャニーズ系アイドルの国、日本に強く憧れてきた。二十歳を超えると、人によっては何度も日本に来ている。都市部だけでなく、全国の観光地を巡っている人も少なくない。ジャニーズが生まれた日本を知りたい、観光に行きたい、という気持ちからなのだと言う。そしてさらに日本語を勉強するようになるのだ。香港の女の子にとっては、SMAPはすごい人気だ。私が話を聞いた香港の女の子(25歳)はキムタクが大好きで、いつかキムタクと話ができるチャンスが来たときのためにと、日本語の勉強を始めたのだという。
それは昔々の日本で、ビートルズやハリウッド映画に夢中だった少年少女時代に欧米諸国に憧れ、欧米諸国の文化やブランドを好み、より深く知るために英語を頑張って勉強していた、30~40年前の日本の少年少女によく似ている。憧れる力が上昇志向へとつながってきたのだろう。
今、日本はどこに憧れているのだろう。何に憧れているのだろう。かつて憧れた欧米諸国を追い抜き、身近になってしまったため、目標や憧れなどを失ってしまったようだ。
憧れは、大きな力になる。憧れる気持ちがなくなった今、何に向かって進めばいいのかもわからなくなっているのかもしれない。