2014年2月10日

大雪で感じた地域力


我が家は古い住宅街なので、家の前のそう広くない道路沿いは大小の戸建て住宅が並び、その間にはアパートが点在している。
昨日の東京は28センチの積雪。30年ぶりの大雪だという。
こういう時は家に限ると決め込み、昨日の私は引きこもっていた。同じように家にいた夫は、何度か外に出て家の周りを確認し、雪かきを始めた。お隣りは既に雪かきを始めていた。すぐにまた積もってしまうとは言え、結局夫は3回雪かきをした。

さて、大雪から一夜明けた今日。
前日夜まで降り続いたので一面雪景色だが、いい天気だ。

都知事選投票日でもあるし、歩けるように雪かきを始めようかと夫が外に出た。なかなか戻らないので様子を見に私も外に出たら、お隣の家の人がずっと遠くの方まで雪かきをしていた。これはすごいと思って見に行ったところ、数軒先のお宅のお年寄りが体調を崩して救急車を呼んだそうだが、雪で救急車が入って来られないと言う。
お隣の家の人は、救急車を呼んだお宅の前の雪かきをしていたのだ。私は家の前の雪かきをしていた夫を呼びに行き、手ぶらだったのでちりとりを取りに行った。立ち往生した救急車から救急隊員がスコップを持って出てきた。そのうちストレッチャーが家の前に来て、お年寄りは救急車で運ばれて行った。運ばれたのは99歳の女性。動物好きのおばあちゃんで、犬を散歩に連れて行けず飼えなくなったからと野良猫を可愛がっている話を聞いたのは10年くらい前になるだろうか。当時は一人暮らしだった。救急車に同行して行った男性 、見送った女性はおそらくそのおばあちゃんの子ども夫婦であろうが、自らも高齢者だ。

さて我が家の前に戻ると、その反対方向には若い夫婦や子どもたち、初老の人など何家族もが外に出て雪かきをしていた。子どもたちは隣りの家、またその隣りまで雪かきをし、初老の人が「ゴミ収集車が通る時に、ここをやっておくと通りやすいよね〜」と話している。中には普段ほとんど顔を合わせることなどないご近所の方も、こういう時はワイワイガヤガヤ。いろいろな世代が混ざって暮らすからこその光景だろう。「うちの前をやってくれてありがとね〜」と声をかけられ、ちょっと嬉しい。

いざという時に地域がまとまる。地域で助け合う。地域力だ。
今回の大雪は、そういうことの大切さを改めて思い起こさせてくれる出来事でもあった。いざという時に大事なのは、動くカラダ・体力と支え合う気持ちだということを再認識させられた 。また、そういう支え合う気持ちに溢れたご近所さんに恵まれた地域に住んでいる幸せを再確認できたことも、私にはありがたかった。

聞けば、そういう様子は我が家の周りだけではなかったようだ。SNSでもそういう光景がいくつも投稿されていた。
平日ではなかったからこそかもしれない。日曜日がいいお天気というのもよかった。外に出たくなるし、明るい中で声をかけ合いたくもなる。
大地震が近いとか、近所の人の顔も知らない無縁社会とか、不安にさせる話題はたくさんある今の時代に、神様が粋な計らいをしたようにさえ思えた。
離れて暮らす家族は、大勢で一緒になって雪かきをするご近所周辺の風景を、「なんか昭和っぽいね~」と言う。
確かに近所でワイワイガヤガヤ一緒になって何かする、ということは、昭和の風情なのかもしれない。そういう風景の中で、少しワクワクしている自分がいる。

このような雪かき風景は、我が家の周辺の場合は戸建て住宅の前が多かった。アパートやマンションの前にはそういう風景はほぼ見られない。集合住宅ではそういう意識は生まれにくいのだろう。
お年よりのお宅の前がそのままになっているのをみつけ、住んでいる人が高齢者であれば、なかなか雪かきはできないことを納得する。
我が家から駅に行くまでの道、普通の靴でスイスイ歩ける所とそうでない場所がはっきり分かれる。そこに、昭和っぽい風景が続けられない時代の移り変わり、事情が覗けるような気がした。