2015年6月4日

できないことができること、知らなかった世界の入口に立つことは、これからの人生が開けていく瞬間

新聞や雑誌など紙を読む人がどんどん減っている。
今や、ほとんどの情報はネット上にある。
メーカーも、行政からの情報も、「詳しくはホームページで」。

だけど、世の中は少子高齢化。
高齢者が5人に一人、4人に一人の時代に入った。
現実に高齢者がたくさんいるのである。
結果的に、ネット上の情報に辿り着けない人が多い。

だからシニア層に向けて、iPadやスマホを使えるようにするための講座を展開している人がいる。
NPO法人シニアSOHO世田谷の代表理事、山根明さん。
昭和10年生まれの80歳だ。


約20年前、マネージャークラスは概ね自分でほとんどパソコン操作はできず、
必要な時は部下にやってもらっていた。
定年退職目前の山根さんにとってもそれは同じで、パソコンは見るだけ。
資料作りは部下にお願いしなくてはならない。
けれど部下も忙しくて、なかなかお願いしてすぐにというわけにはいかない。
仕方がないから山根さんはデータの数字は、電卓片手に手書きで書きこんでいた。
けれどこれは無駄だと思い、パソコンを習いたくてパソコンスクールに行ったのが、今の山根さんの始まりだ。

そのパソコンスクールで山根さんは、
84歳の女性が12時間でメールとインターネットを習得するのを間近で見る。
今から20年前のことだ。
その女性は大学教授の奥さまで、ご自身が若い頃英語教育を受けていた。
だからできたのだろう、と言う。

会社を退職後、山根さんは教える側になってパソコンスクールをスタートした。
シニア向けにわかりやすく教えるパソコンスクールだ。
それでも、ローマ字入力がデフォルトのパソコンは、
やはりシニア世代には、なかなかハードルは高く、かつて受けた教育によって習得に差が出ることも多かったという。

それから十数年がたち、iPadが出てきたとき、これだ!と思ったそうだ。
iPadなら、シニアでも20分で習得できる、と。
銀行のATM、電車の券売機・・・・タッチパネルなら日常的にやらされているから、
シニアの抵抗感も薄いだろうとも思ったのだそうだ。

シニアの皆さんがiPadで必要なのは、メールとインターネット。
それだけで十分。

山根さんはそう言い切る。
大事なのはコミュニケーションツールとして使えるかどうか。
コミュニケーションが取れれば、つながりが広がる。深まる。
さらに調べたいことが調べられるかどうか。
シニアが行政に「詳しくはホームページで」と言われて、パソコンに縁のないシニアは見に行けない。
見に行けるようになれば、それだけでぐっと世界が広がる。

仕事で使うわけじゃないのだから、ワードやエクセルができるようになったところで意味がない。
だったら、パソコンである必要がない。

まずは触ってみないと・・・・ということで無料体験会をスタートした。
そのためにその場で触ってもらうためのiPadを多数買い揃えた。
総務省のビジネス起業コンペで優秀賞などで獲得した賞金がその元手になった。

現在、山根さんはあちこちでシニア向けのタブレット講習会を行っている。
アクティブシニアを増やしていくことが山根さんの狙いである。

山根さんが受講生にいつも言うことがある。

赤ちゃんは泣くのが仕事、と言われるように、
 高齢者は、忘れるのが仕事です。いくら忘れたっていいんです。
 忘れれば、またここで聞けばいいんだから。

そう言われるから、受講生もわからなくなって行きづらくなる、ということもなく、
安心して通うことが出来る。

山根さんが届けているのは「安心」なのだと言う。

スクールに通う上での不安がない=安心。
それに加えて、情報を集めるためのツール、双方向で情報交換するためのツールがあれば、いざという時に「安心」だ。
コミュニケーションをとるための手段があるということは「安心」できるということそのもの。

実際に教えていて一番嬉しいのは、受講生が感動するのを目の当たりにする時だそうだ。
「できたー!」という大きな声とともに感動する姿だ。

見学に来てみなさいよ。
もう、大騒ぎですよ。
すごく賑やか。

こういう姿を見ると、山根さんは、教えてよかった!と思うと言う。
それはまさに人生に触れ合う瞬間だ、と。
シニアの人たちが、今まで知らなかった世界の入口に立ち、これからの人生が開けていくであろう瞬間だ、と。

インタ―ネットの技術進歩はあまりに早く、年齢が高い世代はなかなか追いつけない。
団塊世代より下は、パソコンに触ったことがない人はだいぶ少なくなってきた。
それでも、スキルの格差は想像以上だ。
普通のコミュニケーションから取り残され、知りたい情報にもたどり着けない人はまだまだたくさんいる。

山根さんは、かつては山根さんの先輩世代に教えていたけれど、
今では同世代や山根さんより下の世代にも教える。
高齢化時代の今、山根さんの存在価値は大きい。

シニアのための・・・と言っても、こういう講座にやってくる多数派は女性たち。
問題はシニア男性の引きこもりなんですよ」と、さらなる興味深いお話も飛び出した。
これについては、また別の機会に書こうと思う。




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